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令和2年度
税制改正のポイント①

企業関係

 令和2年度税制改正では、持続的な経済成長の観点から、一定のベンチャー企業育成によるイノベーションの推進、5G(次世代移動通信システム)への設備投資、経済のデジタル化への対応などを後押しする改正が行われます。


1. 中小企業のオープンイノベーションに係る税制措置の創設≪法人税≫

 中小企業が、創業10年未満(新規設立を除く)・未上場のベンチャー企業に1,000万円以上の出資(特定株式の取得)を行った場合、その取得価額の25%の所得控除ができるオープンイノベーション税制が創設されます。ただし、出資先企業の経営資源が出資元企業の事業活動に活かされているなどの基準を満たすことにつき経済産業大臣の証明が必要となります。

※本税制には、大企業を対象に、1億円以上の出資に対して、その25%以下の金額を損金算入できる措置もあります。

出資の要件
  • 1件当たり1,000万円以上
  • 株主間の株式売買ではなく、ベンチャー企業に新たに資金が供給される出資であること(経済産業大臣が証明したもの)など
 所得控除額
  • 出資による株式の取得価額の25%

 適用:令和2年4月1日から令和4年3月31日まで



2. 電子帳簿保存法の改正(国税関係書類の保存方法の見直し)

 電子帳簿保存法が緩和され、電子的に受領した請求書や領収書などのデータをそのまま保存できるようになります。これにより、受領者側でデータの改変のできないクラウドサービス等を利用している場合、請求書・領収書を紙で出力せず、受け取った電子データをそのまま電子保存することが可能になります。

電子保存の方法
改正前   受領者側でのタイムスタンプによる認証
  改ざん防止等のための事務処理規程を作成して運用する方法
 改正後  すでに認められている上記(改正前)の保存方法に加えて、次の方法も可能になります。
  発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録(受領者側の認証は不要になる)
  電磁的記録について訂正削除ができない、もしくは履歴が残るシステムを利用する。

 適用:令和2年10月1日から



3. 消費税の申告期限の延長(1か月)≪消費税≫

 消費税の確定申告書の提出期限は、事業年度終了日から2か月以内ですが、法人税申告書の提出期限について延長の特例の適用を受ける法人は、届出によりその提出期限を1か月延長する特例が創設されます。
 これにより、法人税確定申告書の提出期限を延長している法人は確定した決算に基づいて消費税確定申告書を提出できるようになります。延長された期間には、利子税が発生します。


 適用:令和3年3月31日以後に終了する事業年度末日の属する課税期間から



4. 連結納税制度の改正(グループ通算制度の導入)≪法人税≫

 連結納税制度は、企業グループを一体とみて親会社と100%子会社(完全子会社)の所得通算等を行う制度です。企業グループ内の黒字と赤字を通算することにより、企業グループ全体としての税負担を軽減できるなどのメリットがあります。
 現行制度では、親会社が子会社から申告のための情報を集約し、企業グループ全体の申告・納税を行うため、子会社1社において税務調査等により修正申告などが発生した場合、企業グループ全体で修正申告を行う必要があり、事務負担が大きいなどの弊害がありました。
 改正によって、事務負担の軽減等の観点からグループにおいて損益通算を可能とする基本的な枠組みを維持しつつ、親会社、完全子会社のそれぞれが申告・納税を行うなどの「グループ通算制度」へ移行されます。

 適用:令和4年4月1日開始事業年度から





5. 5G投資促進税制の創設 ≪法人税・所得税≫

 次世代の移動通信規格である5Gの情報通信インフラを早期にかつ集中的に整備するため、経済産業大臣の認定に基づき、5G設備に係る投資について、30%の特別償却又は15%の税額控除との選択適用ができる制度(法人税額の20%が上限)が創設されます。
※この制度は「特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)」の制定が前提です。

対象設備の例
全国5G事業者が整備する
基地局の前倒し整備分
 送受信設備
 空中線(アンテナ)
ローカル5G事業者が整備する5G設備  送受信設備 
 通信モジュール
 コア設備
 光ファイバ


※「ローカル5G」とは、大手通信事業者ではない企業や自治体が、地域や産業の個別のニーズに応じて構築する局所的な5Gネットワークです。

制度の概要


 適用:上記新法の施行日から令和4年3月31日まで



6. 企業版ふるさと納税の拡充(税額控除割合の引き上げ)≪法人税・地方税≫

 企業版ふるさと納税は、企業が一定の地方公共団体に寄附を行った場合に、寄附額額の約3割が経費(損金算入)となる軽減効果に加えて、寄附額の一定割合が税額控除される制度です。
 改正によって、地方税(事業税・住民税)の税額控除割合が3割から6割に引き上げられ、法人税の控除と合わせて、企業負担が1割(現行4割)に軽減されます。



 適用:令和7年3月31日まで



令和2年度
税制改正のポイント2

個人関係、土地・住宅、その他

 個人関係では、家計の安定的な資産形成を支援するため、NISA制度の見直し等が行われました。また、土地関係として、低未利用地の利活用を促進する特別控除や、所有者が不明な土地等に対する固定資産税の課税上の課題に対応する措置が講じられます。


1. NISA制度の見直し・延長 ≪所得税≫

 上場株式等の投資から生ずる配当や売却益を非課税とするNISA制度について、以下のように見直し‣延長されます。

改正内容
一般NISA
(非課税期間が5年間)
令和10年まで、5年延長されたうえ、令和6年から2階建ての「新一般NISA」へ移行します。
「新一般NISA」では、これまでの非課税投資枠(2階部分)を利用するには、原則として、1階部分において積立投資をする必要があります。
 つみたてNISA
(非課税期間が20年間)
令和24年まで、5年延長されます。
 ジュニアNISA 適用期限である令和5年末日をもって終了します。



2. 未婚のひとり親への寡婦(夫)控除の適用 ≪所得税・住民税≫

(1)未婚のひとり親への寡婦(夫)控除の適用
 令和2年分の所得税より、未婚のひとり親について寡婦(夫)控除(所得税35万円・住民税30万円)が適用されます。適用条件は、離別・死別の場合と同様です。
 
※未婚のひとり親…婚姻していない者が生計を一にする子を有する場合

(2)寡婦(夫)控除の見直し
 寡婦(夫)控除について、以下の見直しが行われます。
 寡婦に寡夫と同様の所得制限(合計所得金額500万円〈年収678万円〉以下)が設けられます。
 住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある場合には、控除の対象外になります。
 子あり寡夫の控除額が、子あり寡婦の控除額(所得税35万円、住民税30万円)と同額になります。



 ※「生計を一にする子」は、総所得金額等の合計額が48万円以下であること

 適用:令和2年分以後の所得税から(個人住民税は令和3年度分以後)



3. 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応 ≪固定資産税≫

 土地や家屋の登記名義人が死亡し、その相続登記がなされず、その土地や家屋の所有者が明らかでない所有者不明土地等の全国的な増加に伴い、それらの土地等に対する固定資産税の正常な課税に対応するため、次の措置が講じられます。

(1)現に所有している者の氏名・住所等を申告させる制度の創設
 登記簿上の所有者が死亡し、相続登記が行われるまでの間は、市町村が条例によって、現に所有している者(相続人等)に対し、氏名・住所、その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させる制度が創設されます。また、無申告には罰則が設けられます。

 適用:令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後から


(2)使用者を所有者とみなして課税する制度の拡大
 市町村が調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合、事前に使用者に通知した上で、使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課税することになります。
 ※住民票、戸籍等の公簿上の調査、使用者と思われる者やその他関係者への質問等。

 適用:令和3年度分以後の固定資産税から



4. 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設≪所得税≫

 例えば、空き地、空き家、空き店舗、工場跡地のほか耕作放棄地、管理が放棄された森林や、一時的に利用されている資材置場や青空駐車場など取引価額が低額なために取引コスト等が相対的に高くなることがネックとなって取引が進まず、利活用されないまま所有されている土地があります。こうした低未利用地の活用促進のため、一定のものに係る譲渡所得を対象に100万円の特別控除が創設されます。



 適用:一定の日から令和4年12月31日の譲渡まで



5. 配偶者居住権又は配偶者敷地利用権についての措置 ≪相続税≫

 民法改正により、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者が、遺産分割等においてその建物に終身又は一定期間、無償で居住することを認める法定の権利を取得することができる「配偶者居住権」が新設され、令和2年4月1日から施行されます。
 平成31年度の税制改正では、その被相続人の相続における配偶者居住権の財産評価方法が明らかにされましたが、令和2年度の税制改正では、相続後にその配偶者居住権が譲渡等された場合の譲渡所得の計算方法が定められます。



6. その他

(1)振替納税の通知依頼とダイレクト納付の利用届出の電子化 
≪所得税≫
 納税者が、所得税について振替納税の手続きをとる際は、口座振替依頼書に住所、氏名、金融機関名、預貯金口座名などを記入し、預貯金通帳に使用している印鑑を押して、税務署か金融機関に提出する必要がありますが、その手続きが電子署名等を要することなく「e-Tax」を利用して電子的にできるようになります。ダイレクト納付の利用届出についても同様の改正が行われます。

 適用:令和3年1月1日以後


(2)居住用賃貸建物の取得時における仕入税額控除の制限 ≪消費税≫
 居住用賃貸建物の課税仕入れは、仕入税額控除が認められなくなります。ただし、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分は、引き続き、仕入税額控除の対象となります。

 適用:令和2年4月1日以後の契約による10月1日以後の仕入れから


(3)譲渡特例を適用した場合に住宅ローン控除の適用を制限 
≪所得税≫
 住宅ローン控除の適用について「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(3,000万円の特別控除など。以下、譲渡特例)などの適用を受けていないこと」という一つの要件があります。
 そのため、買換えなどによって新宅に居住して住宅ローン控除を適用し、2年を経過してから旧宅を売却することにより、譲渡特例を適用することが可能でした。
 令和2年4月1日以後、新宅に居住した日の属する年から3年目までに、旧宅の譲渡について譲渡特例を適用する場合には、新宅について住宅ローン控除の適用ができなくなります。

 適用:令和2年4月1日以後


(4)国外財産調書制度等の見直し 
≪法定調書関係≫
 適正な課税の観点から、国外において行われた取引等について、納税者による適切な情報開示を促すため、国外財産調書制度及び更正・決定の除斥期間について見直しが行われます。

相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等へ記載の柔軟化
 相続を開始した年の12月31日において有する国外財産に係る国外財産調書には、相続又は遺贈により取得した国外財産(相続国外財産)を記載せずに、提出することが可能になります。

 適用:令和2年分以後の国外財産調書、財産債務調書から

その他の見直し
 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し
 過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し
 国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提出がない場合の加算税の軽減措置及び加重措置の特例の創設

 適用:令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後の相続・遺贈に係る相続税から


(5)国外中古建物の不動産所得に係る損益通算時の特例の創設
 ≪所得税≫
 国外中古建物による不動産所得について、不動産所得の計算上、損失の金額があるとき、耐用年数を簡便法等により計算した国外中古建物の減価償却費に相当する金額は生じなかったものとみなされることになります。

 適用:令和3年以後



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