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平成29年度税制改正では、中小企業の設備投資を後押しする税制の大幅拡充が行われ、また、個人所得関係では、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し等が行われます。 |
法人・固定資産税 |
中小企業向け投資促進税制の見直し |
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(1)法人税 中小企業経営強化税制への改組により設備投資を後押し
平成29年4月1日以降の設備投資に係る主な支援税制が次のように見直されます。
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《経営強化法の経営力向上計画の認定を受けて行う場合(中小企業経営強化税制)》 |
中小企業等経営強化法の計画認定に基づく設備投資を後押しするために、中小企業投資促進税制の上乗せ措置について適用対象に器具備品及び建物付属設備が追加され(図表1の下線箇所)、中小企業経営強化税制とされます。この措置を受けるには経営力向上計画を作成して経済産業局等に申請し認定を受けなければなりません。経営力向上計画作成等については、認定支援機関である当会計事務所に必ずご相談ください。 |
図表1 適用対象設備
類型 |
生産性向上設備(A類型) |
収益力強化設備(B類型) |
要件 |
①経営強化法の認定
②生産性が旧モデル比で年1%以上改善する設備 |
①経営強化法の認定
②投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 |
対象設備 |
◆機械装置(160万円以上)
◆測定工具及び検査工具(30万円以上)
◆器具備品(30万円以上)
◆建物附属設備(60万円以上)
◆ソフトウエア(70万円以上)
*情報を収集・分析・指示する機能 |
◆機械装置(160万円以上)
◆工具(30万円以上)
◆器具備品(30万円以上)
◆建物附属設備(60万円以上)
◆ソフトウエア(70万円以上) |
その他要件 |
生産等設備を構成するものであること*/国内への投資であること/
中古資産・貸付資産でないこと 等 |
税制措置 |
即時償却または7%税額控除(資本金3千万円以下もしくは個人事業主は10%) |
*事業の用に直接供される設備(生産等設備)が対象。従って事務用器具備品や本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設に係るものなどは対象外。 |
《その他の場合(中小企業投資促進税制) |
中小企業投資促進税制とは、生産性向上等を図るため一定の設備投資を行った場合に税額控除(7%)または特別償却(30%)が認められるというものですが、その対象設備から器具備品が除外され、平成31年3月末まで2年間延長されます。
中小企業投資促進税制
〔通常措置〕
機械装置:160万円以上
ソフトウエア:複数合計70万円 以上
⇒控除税額(7%)または特別償却(30%) |
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商業・サービス業・農林水産業活性化税制
器具備品:30万円以上
建物附属設備:60万円以上
⇒控除税額(7%)または 特別償却(30%) |
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2年間
延長 |
また、商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業等の活性化を目的に、一定の要件を満たした経営改善設備を取得した場合、特別償却または税額控除が認められる措置も2年間延長されます。 |
(2)固定資産税 固定資産税の半減特例の拡充と時限措置の終了
中小企業等経営強化法の認定を受けた事業者が取得する一定の機械装置の固定資産税を3年間半減する特例について、その対象設備に、地域によって業種を限定*した上で、図表2の要件をすべて満たす器具・備品や建物附属設備などが追加されます。なお、この特例制度は、期限である平成31年3月31日をもって終了することになります。 |
図表2 追加される設備の要件
種類 |
要件① |
要件② |
要件③ |
販売開始時期 |
生産性 |
取得価額 |
測定工具及び検査工具 |
5年以内 |
旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量など)が1%以上向上 |
30万円以上/1台又は1基 |
器具・備品 |
6年以内 |
建物附属設備 |
14年以内 |
60万円以上/1件 |
*地域による業種の限定
地域 |
対象業種 |
最低賃金が全国平均未満の地域 |
全業種 |
最低賃金が全国平均以上の地域(注1) |
労働生産性が全国平均未満の業種(注2) |
(注1) 「最低賃金が全国平均以上の地域」については、平成28年度地域別最低賃金では、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府が全国平均以上となっています。
(注2) 「労働生産性が全国平均未満の業種」については、平成24年経済センサスでは、一部の小売業(織物・衣類・飲食料品など)、宿泊業、飲食店、理美容などが全国平均未満となっています。 |
経営強化法認定
固定資産税の特例
生産性が年平均1%以上
→固定資産税を半減(3年間) |
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対象設備を拡充 |
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中小企業が、製品や技術の開発を行った場合に、その試験研究費の額の12%を法人税額から控除する制度について、2年間の時限措置として平成29年度からその控除率を最大17%とする措置が講じられるとともに、対象となる研究開発費の範囲に「新たなサービスの研究開発費用」が追加されます。 |
改正ポイント1 |
控除率及び上限枠の拡大 |
現行
税額控除限度額(法人税額の25%を上限)=A:試験研究費の額×12%
改正後
試験研究費の額が過去3年間の平均額より5%超増加している場合
A⇒研究開発費の額×{12%+(増加割合-5%)×0.3}・・・(最大17%)+さらに、控除の上限を「法人税額の35%」に |
改正ポイント2 |
新サービス開発に要する試験研究費が対象に追加 |
新サービス開発業務(データの収集・分析、新サービスの設計等)に要する原材料費、人件費、経費、委託費が税額控除の対象となる試験研究費に追加されます。
*人件費については、開発業務に専ら従事し、情報の解析に専門的な知識を有する人(情報解析専門家)に係るものに限られます。 |
企業が支払う給与等が、一定割合以上増加した場合に、その増加額の10%を法人税額から控除する所得拡大促進税制について、現行制度に加え、平成29年度に高い賃上げを行った企業の税額控除をさらに拡大する改正が行われます。 |
改正ポイント |
前期比2%以上の賃上げで前期比増加額部分の控除率が現行の2倍以上に |
現行
次の要件1~3を全て満たした場合、平成24年度比増加額の10%が税額控除されます。
●要件1:給与等支給額が平成24年度比、3%以上増加
●要件2:給与等支給額が前事業年度以上
●要件3:平均給与等支給額(給与等支給額÷雇用者の月別合計数)が前事業年度超
税額控除限度額
(法人税額の20%〔大法人は10%〕を上限) |
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= |
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改正後
平成29年度は、現行制度に加え、上記の要件3が「平均給与等支給額が前期比2%以上だった」場合、前事業年度からの増加額の12%が上乗せされます。
税額控除限度額
(法人税額の20%〔大法人は10%〕を上限) |
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= |
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+ |
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上場株式の株価をもとに自社株式(非上場株式)の評価額を割り出す類似業種比準方式について、以下のような見直しが行われ、平成29年1月1日以後の相続等により取得する自社株式の評価に適用されます。
●中小企業の円滑な事業継承等を阻害しないように、また、中小企業の実力を株式評価額により適 切に反映させるために、評価のもととなる上場株式の株価について、評価時点前、2年間平均 値の採用を可能とする。
●成長・好業績企業の負担軽減のため、評価の3要素(配当金額、利益金額、簿価純資産価額) の比重を等しくする。
●時価純資産価額が高い企業の株価抑制のため、会社規模の判定基準を見直す。 |
後継者が先代経営者から自社株式の相続又は贈与を受けた場合に発生する相続税又は贈与税の納税を猶予する事業承継税制について、相続税又は贈与税の申告期限後一定期間、維持しなければならない要件の一部を緩和する改正が行われます。この改正は、平成29年1月1日以後の相続等により取得する財産に係る相続税等について適用されます。
《現行では、次の要件などを満たして事業を継続することが必要》
要件1 |
雇用の8割以上を5年間平均で維持 |
要件2 |
後継者が代表を継続 |
要件3 |
先代経営者が代表者を退任(有給役員として残留可)(贈与の場合) |
要件4 |
対象株式を継続して保有 |
要件5 |
上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しないこと等 |
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改正ポイント1 |
「端数切捨て」で少人数企業でも要件1を満たしやすく |
要件1の雇用要件について、維持すべき従業員数を計算する際、現行では「端数切り上げ」となっていますが、これが「端数切捨て」とされます。
図表3 要件1を満たす従業員数の見直し
相続または贈与時の従業員数 |
5人 |
4人 |
3人 |
2人 |
1人 |
雇用の80%以上 |
現行 |
4人 |
4人 |
3人 |
2人 |
1人 |
改正後 |
4人 |
3人 |
2人 |
1人 |
1人 |
改正後は、少人数企業で1人減っても要件1を満たすことに |
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改正ポイント2 |
取り消しとなった場合は相続税と同額の納税も可能に |
「贈与税の納税猶予」を活用中、雇用等の条件を満たせず納税猶予が取り消しになった場合、暦年課税による贈与税の納税(相続税より高額)が必要ですが、改正により相続時精算課税との併用が認められ、相続税と同額の納税となります。(下図参照)
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贈与税の納税(暦年課税と相続時精算課税の併用化)
・暦年課税
*基礎控除110万円、
累進税率(最高55%)
・相続時精算課税
*特別控除2500万円、
一定税率20% |
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資本金1億円以下の法人の所得金額のうち、年間800万円以下の部分に対する法人税率(本則19%)は平成31年3月末まで15%に据え置かれます。
図表4 資本金1億円以下の法人の法人税率
所得区分 |
税率 |
年間800万以下の部分 |
15% |
年間800万円超の部分 |
23.4%(平成30年度以後は23.2%) |
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法人が支給する役員給与のうち、損金算入が認められる定期同額給与の範囲に「税及び社会保険料控除後の金額(いわゆる手取り額)が同額の定期給与」が加わります。 |
法人税 |
所得が大きい中小企業の優遇税制の適用を制限 |
平成31年4月1日以後に開始する事業年度から、次の場合には、中小企業に対する「租税特別措置法における優遇税制」の適用を停止する改正が行われます。
その事業年度開始前、3事業年度の平均所得金額が15億円を超えている場合 |
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所得税 |
配偶者控除・配偶者特別控除の見直し(平成30年分以後) |
(1)配偶者控除の縮減
納税者本人の所得金額に関係なく配偶者の所得金額が38万円(給与収入で年103万円)以下である場合に適用が受けられる配偶者控除について、納税者本人の所得金額が900万円(給与収入で年1,120万円)を超えると控除額が逓減していき、1,000万円(給与収入で年1,220万円)を超えた場合、適用が受けられなくなる改正が行われます。 |
図表5 改正後(平成30年分以後)の配偶者控除
納税者本人の所得金額 |
控除額 |
70歳未満の配偶者 |
70歳以上の配偶者 |
900万円以下 |
38万円 |
48万円 |
950万円以下 |
26万円 |
32万円 |
1,000万円以下 |
13万円 |
16万円 |
1,000万円超 |
適用なし |
*控除額は異なりますが、個人住民税においても平成31年度以後、同様の改正が行われます。 |
(2)配偶者特別控除の拡大と調整
納税者本人の所得金額が年1,000万円以下(給与収入で1,220万円以下)で配偶者の所得金額が38万円を超え76万円未満(給与収入で年103万円超、141万円未満)である場合に適用を受けられる配偶者特別控除について、上記下線部分の76万円未満が123万円以下(給与収入で年、約201万円以下)に引き上げられ、配偶者控除と同様に納税者本人の所得金額が900万円(給与収入で1,120万円)を超えると控除額が逓減していく改正が行われます。 |
住宅ローン減税について、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定省エネ改修工事と併せて行う①外壁、浴室、土台、床下、基礎、地盤等の劣化対策工事、②給排水管又は給湯管の維持管理、更新を容易にするための工事に係る一定の要件を満たすものが追加されます。適用は、平成29年4月1日から同33年12月31日までの間に居住する場合です。 |
株式や投資信託の売却益や配当金を非課税とする現行のNISA制度と選択制により、平成30年に長期積立型のNISA制度が創設されます。 |
項目 |
現行のNISA制度 |
創設されるNISA制度 |
年間投資限度額 |
120万円 |
40万円 |
対象となる投資 |
上場株式や公募株式投資信託等 |
一定の公募等株式投資信託 |
非課税期間 |
5年間 |
20年間 |
事務 |
証券会社等で口座を開設 |
口座開設可能期間 |
平成35年まで |
平成49年まで |
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平成29年4月1日以後に全戸が販売される高さ60mを超えるマンションから、1階上昇するごとに約0.26%(区分所有者全員による申し出による割合も可)、各戸の固定資産税額が上昇する措置が講じられます。 |
平成29年分以後の確定申告から、医療費控除の適用に必要な添付書類が医療費等の領収書に代えて、医療費の明細書(協会けんぽから交付を受けた医療費通知書等)や医薬品の購入明細書とされる改正が行われます。経過措置として、平成31年分までの確定申告については、領収書の添付が認められます。 |
相続税の物納に充てることができる財産の順位について、上場株式等を第1順位とする改正が行われ、金融商品による物納が行いやすくなりました。(図表8) |
図表8 相続税の物納財産の順位の見直し
順位 |
現行 |
改正後 |
第1 |
国債、地方債、不動産、船舶 |
国債、地方債、不動産、船舶、上場株式等 |
第2 |
社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券 |
社債、株式、証券投資信託又は貸付信託の受益証券*上場株式等を除く |
第3 |
動産 |
動産 |
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登録免許税 |
土地売買に係る登録免許税の軽減措置を延長 |
土地売買の所有権移転登記に係る登録免許税を固定資産税評価額の1.5%とする軽減措置が平成31年3月31日までの登記に延長されます。 |
自動車重量税・取得税 |
エコカー減税対象基準を引き上げて厳格化 |
平成29年5月1日以後、燃費性能の基準が引き上げられる改正が行われます。それにより、エコカー減税の対象車種が絞り込まれることが見込まれます。 |
※詳しくは、笠原会計事務所まで、お気軽にお問い合わせください。 |
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