保険には「公的保険」と「私的保険」がある
「保険」という言葉を聞くと、生命保険や火災保険、あるいは自動車保険などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。これらは、民間の保険会社が運営する保険で、原則として加入するかどうかは個人の自由です。これを「私的保険」といいます。
一方、健康保険や厚生年金保険、雇用保険などは、国が運営している「公的保険」です。公的保険は、例えば生活に余裕がないため私的保険に加入できない人でも、病気・ケガの際や定年後などに、生活に困らないようにするための保険です。そのため、原則としてすべての国民が何らかの公的保険に加入します。
なお「社会保険」とは、この公的保険全体のことを指す場合もありますが、一般的には、社会保険事務所が窓口となっている「健康保険」と「厚生年金保険」をいう場合が多いようです。また「労働保険」とは、「雇用保険」と「労災保険」のことを指しています。 |
・雇用保険
・労災保険 |
} |
※ |
・生命保険
・火災保険 など |
・介護保険
・健康保険
・厚生年金保険 など |
} |
(狭義の)社会保険 |
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※労働保険 |
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<公的保険の一例とその給付内容>
保険の種類 |
給付の内容 |
健康保険 |
仕事中以外の病気やケガなどの際に、保険給付が受けられる保険 |
厚生年金保険 |
老齢や障害、死亡したときに給付が受けられる保険 |
雇用保険 |
失業等の際に給付が受けられる保険 |
労災保険 |
仕事中のケガ、休業、障害などの際に、保険給付が受けられる保険 |
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健保・厚年の加入が必要な事業所は?
一定の条件を満たしている事業所であれば、その事業所として健康保険と厚生年金保険に加入することになります。具体的には、以下のような場合に加入が義務付けられます。
(1)法人の事業所の場合
株式会社はもちろん、法人であれば、たとえ社長1人だけの会社であっても、必ず社会保険に加入しなければなりません。また法人には、株式会社だけでなく以下のようなものが該当します。 |
合名会社、合資会社、合同会社、社団法人、財団法人、共同組合、NPO法人、医療法人、社会福祉法人、学校法人、税理士法人、監査法人、弁護士法人 など |
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(2)法人以外で5人以上の従業員を雇っている事業所
法人ではない個人事業主などでも、従業員が5人以上いる場合には、原則として社会保険に加入しなければなりません。
ただし、以下の事業所であれば、5人以上の従業員がいたとしても加入は任意となっています。
①農林水産業・畜産業
②旅館、飲食店、接客業、娯楽業、美容・理容などのサービス業
③弁護士、税理士、司法書士などの士業
④神社、寺院、教会などの宗教業 |
従業員数→ |
5人未満の事業所 |
5人以上の事業所 |
業種 |
↓ |
個人 |
法人 |
個人 |
法人 |
・農林水産業 |
任
意 |
強
制 |
任
意 |
強
制 |
・サービス業 |
・士業 |
・宗教業 など |
・上記以外の業種 |
強
制 |
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なお、事業所として社会保険に加入すると、そこで働く人は原則として全員被保険者となります。希望者のみが加入できるというものではないので注意しましょう。
ただし、アルバイトなどのパートタイマーについては、正社員の所定労働時間と所定
労働日数のどちらも概ね4分の3以上勤務している場合に、被保険者となります。
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社会保険の適用事業所のメリット
経営者が、その従業員などのために社会保険に加入すると、原則的にはその保険料の半額を負担しなければなりません。
しかし、事業所として社会保険に加入すると、次のようなメリットが考えられます。
①従業員が雇いやすくなる
会社などの福利厚生の一環として、社会保険はとても重要です。従業員の採用などの際に、安心して働ける職場であることをアピールできます。
②社会的な信用度がアップする
本来加入義務があるにもかかわらず、加入手続きを行わない事業所もあるようです。きちんと加入することで、取引先などに法律を守る姿勢をアピールできます。 |
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健康保険と厚生年金保険の保険料は、会社が従業員に支払う給料などをもとに決められますが、事務作業の簡略化などのため、原則として1年間同じ金額を徴収することになっています。7月1日から10日は、その毎月の徴収額を決定するための「算定基礎届」の提出期間です。ただし、昇給・降給により報酬額に一定以上の変更があった場合には「月額変更届」を提出し、保険料額の見直しをします。
4月から6月の報酬額を基に算出した標準報酬月額をあらかじめまとめておくなど、余裕を持って準備を行いましょう。 |
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