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1 外国人を雇い入れるメリットと留意点
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求人広告に対し、日本人の応募が減る一方で、外国人から応募がくることが増えてきています。人手不足に悩んではいるものの、外国人を雇い入れた経験がなく、躊躇している社長も多いのではないでしょうか。まずは、外国人を雇い入れるにあたってのメリットと留意点を見てみましょう。 |
(1)メリット ●雇い入れられる人材の選択肢が広がり、人手不足の解消や労働環境の改善につながる ●企業のグローバル化が進むきっかけになる ●特定分野のスキルを活かし、即戦力として活躍する可能性が高い |
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●技術習得等の目的が明確な場合、勤労意欲が高く、まじめに働く傾向がある ●一定の条件を満たせば、助成金を活用できる |
(2)留意点 ●「在留資格」の有無などをきちんと確認しないと、無自覚に法律・法令に違反してしまう可能性がある ●雇入れの手続きに手間がかかる ●言葉や文化、習慣の違いから、コミュニケーションが難しい場合がある ●宗教に対する配慮が必要となる場合がある |
Check! 積極的に外国人を雇い入れたい場合は? |
ハローワークや学校の就職課、人材紹介会社に相談しましょう。通訳が在籍する「外国人雇用サービスコーナー」を設けたハローワークもあります。 |
外国人の雇い入れを決める前に、必ず応募者の下記資料を確認します。 (1)在留カード(両面) (2)パスポート (3)就労資格証明書 (4)資格外活動許可書 (5)住民票 (6)マイナンバーカード (1)に記載された「在留資格」(下図②)に応じて、(3)(4)の提出も求める必要があります。(5)(6)は税務の手続きや社会保険加入時に必要です。 書類はコピーして保管しましょう。 |
注意! 「不法就労」の責任は事業主にも |
在留資格は29種類あり、種類に応じて就労の可否や就業できる業務の範囲が定められています。これに反して就労した外国人は「不法就労者」となります。 雇用する事業主も、故意でなくても「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。店舗等を複数持つ企業では、店舗管理者が在留資格を確認せず外国人をアルバイトで雇い入れて問題になるケースも。雇入れ時は必ず本部の労務責任者が関わりましょう。 ※在留資格一覧は出入国在留管理庁Webサイトでご確認ください。 また、在留期間を過ぎた外国人は「不法滞在者」です。不法滞在を認知後、放置すると、ほう助の罪に問われるおそれも。すぐに警察へ通報しましょう。 |
こんなとき、どうする? 在留資格Q&A |
Q「技能」の在留資格を持つ調理師に、ホールでの接客を任せることはできますか? |
A 「技能」等の活動制限がある在留資格では、接客や工場のライン作業等「単純 労働」とみなされる業務や、異なる在留資格に基づく業務を行うことが認められません。なお、調理師でも在留資格が「特定技能」(外食業)、「特定活動」(通常パスポートに添付されている指定書を要確認)、または活動制限のな い在留資格(永住者等)であれば、接客等の単純労働が可能です。 |
Q 留学生がアルバイトに応募してきましたが、雇入れは可能ですか? |
A 在留資格「留学」は就労不可ですが、裏面に「許可:原則28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載があれば、その内容に基づき可能です。 |
■POINT■ |
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1 労働条件を明示する |
外国人を雇い入れることになったら、契約前に業務内容、就業場所、賃金、労働時間等について、その内容が明らかになる書面(労働条件通知書等)を交付することが必要です。口頭で賃金を伝えるなど、あいまいなやりとりはトラブルの原因になります。外国人労働者の母国語で表記するなど、伝わりやすくなるよう工夫するとよいでしょう。厚生労働省のWebサイトには、外国人労働者向けモデル労働条件 | ||
通知書が公開されています。外国人労働者同士や外国人労働者と日本人労働者との「明確な理由のない待遇差」は、急な退職などのトラブルに発展するおそれがあります。また、外国人労働者にのみ適用される福利厚生を設ける場合は、日本人労働者からの反発を招くこともあるため、事前に職場内に周知し理解を得るなどの注意が必要です。 |
「トラブルに発展した例」 ●昇給の判断基準があいまいだった 賃金を同一に設定していた外国人労働者3人のうち、1人の月給を理由は説明せず に5,000円上げた。残りの2人は「なぜ自分たちは上がらないのか」不満に思い、 退職してしまった。 ●国の文化や習慣を理解していなかった アジア系外国人労働者が旧正月の休暇取得を希望したが、「繁忙期だから」と認 めなかった。母国に住む家族との再会を熱望していたため、無断欠勤して帰国し そのまま日本に戻らなかった。 ●既存の日本人労働者への説明が不十分だった 外国人労働者に対し、法定の年次有給休暇に加え、帰国のための特別休暇を急遽 付与した。それを不平等に感じた日本人労働者が反発。外国人労働者は居心地が 悪くなって出社しなくなり、連絡も取れない状況に。警察へ行方不明者届を出さ なければならなくなってしまった。 |
注意! 雇用にかかる法律は順守 |
労働基準法や最低賃金法等、雇用にかかる法律は、外国人労働者にも日本人労働者と同様に適用されます。外国人労働者の国籍、信条または社会的身分を理由に、日本人労働者と比べて不当に低い賃金設定、長時間労働の強制等、労働条件について差別的取扱いをしてはいけません。厚生労働省「外国人雇用のルールに関するパンフレット」も合わせてご確認ください。 |
2 ハローワークへ届け出る |
全ての事業主は、外国人(「外交」「公用」の在留資格および特別永住者を除く)の雇入れまたは離職のとき、「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。雇用保険の被保険者となる場合は「雇用保険被保険者資格取得(喪失)届」、 被保険者とならない場合は「外国人雇用状況届出書」を記入し、管轄のハローワークに提出する必要があります。 |
Check! 「外国人雇用状況の届出」時の確認事項 |
①氏名(ふりがな) ②在留資格 ③在留期間(満了日) ④生年月日 ➄性別 ⑥国籍・地域 ⑦資格外活動許可の有無 ⑧在留カード番号 いずれも在留カードやパスポート、住民票に記載されています。在留資格が「特定技能」の場合には分野を、「特定活動」の場合には活動類型を、通常パスポートに添付されている指定書でそれぞれ確認します。⑧は、在留カードやパスポートの資格外活動許可証印または資格外活動許可書などで確認します。 |
※ハローワークへ提出する書類や社会保険の加入手続き時には、外国人名の「ふり がな」の記入が必要です。住民票で確認しましょう。 |
3 気持ちよく働いてもらうための環境を整える |
異国の地で就労する外国人に対し、さまざまな不安を取り除く配慮も必要です。外国人を雇い入れる事業主は、日常生活もサポートし、安心して就労できる環境を整えましょう。 わが国では、外国人労働者が安心して働けるようにするための指針を定めています。 |
■外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針 (一部抜粋・要約) |
〇適正な労働条件の確保 ・国籍を理由として差別的取扱いをしてはならない ・労働条件を明示する ・賃金の決定方法や控除等について明確に説明する ・適正な労働時間の管理を行うほか、労働者名簿等の調製を行う など |
〇適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等 ・外国人労働者が円滑に職場に適応できるよう、コミュニケーションを取りやす くするための環境づくりに努める ・安心して日常生活・社会生活を送れるように、必要な支援を行うよう努める など |
〇安全衛生の確保 ・健康診断を適正に実施する ・労働災害防止のための指示等を理解できるように、必要な日本語や合図等を覚 えてもらうよう努める ・労働災害防止に関する標識や提示は、図解等を用いてわかりやすくするよう努 める など |
〇解雇の予防および再就職の援助 ・外国人労働者に対して安易な解雇を行わないようにする ・再就職を希望する外国人労働者に対して、ハローワークと密接に連携し、求人 情報の提供など必要な援助を行うよう努める など |
Check! 「外国人雇用管理アドバイザー」活用のススメ |
外国人労働者の雇用管理の疑問点やサポートの仕方等を、専門的な知識や経験を有する「外国人雇用管理アドバイザー」に相談することができます。詳しくはお近くのハローワークへお問い合わせください。 |
■POINT■ |
●外国人も、日本で働いて所得を得ていれば、原則として所得税や住民税、社会 保険の対象となります。 |
●給与から何がどのくらい天引きされ、手取り額がいくらになるのか、外国人の 雇い入れ持に説明しましょう。 |
1 税務について |
給与等の支払いに伴う源泉所得税や住民税の税務については、日本人労働者と異なる場合があるので注意が必要です。外国人労働者が「居住者」か「非居住者」かで、その取扱いが変わります。確認する際は、必ず公的な書類でチェックすることが重要です。 |
■外国人労働者に対する所得税・住民税の課税関係 |
(1)所得税は原則として源泉徴収と年末調整を行う |
日本人労働者と同じように「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受け、毎月源泉徴収します。また年末調整も行い、金額等を記載した「源泉徴収票」を交付します。ただし、以下の点に注意が必要です。 |
1月1日時点で国内に住所がある外国人労働者(居住者)は住民税(所得割・均等割)の対象となります。所得税の源泉徴収義務がある給与支払者は、日本人労働者の場合と同様に、毎月の給与から住民税を天引きして市区町村に納入します。 |
2 社会保険等について |
●外国人の雇入れに際して助成金を受けたいときは? 人材確保等支援助成金の支給を受けられる場合があります。通訳費用のほか、 社内マニュアルの翻訳や、標識の多言語化等にかかる費用も対象となります。 参照:厚生労働省Webサイト「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 |
●「労働条件通知書」を外国語で作成したいときは? 厚生労働省のWebサイトで、穴埋め形式のモデル労働条件通知書が公開されてい ます。英語や中国語をはじめ、13の言語(令和6年7月末現在)に対応しています。 参照:厚生労働省Webサイト「労働基準関係リーフレット」 |
●国外に住む親族に扶養控除等を適用したいときは? 一定の条件を満たしている親族については、外国人労働者から必要書類を提出し てもらうことで、扶養控除等を適用することができます。 参照:国税庁Webサイト「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」 |
●非居住者の所得税等の減免について知りたいときは? 非居住者にかかる所得税等は、租税条約に基づいて減免される場合があります。 参照:国税庁タックスアンサーNo.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」 |
笠原行政書士事務所 |