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-会社法に載っていない株主総会実務-
1. 役員報酬総額は、毎年、決議しなくてもよいのか。
会社法上、取締役・監査役の報酬等に関しては、「定款に定めていないときは、株主総会の決議によって定める」(361条1項・387条1項)とありますが、毎年定めるとは規定されていません。
この点について、取締役及び監査役の報酬額は一度株主総会の承認を得れば、報酬額の変更がない限り必ずしも毎年の定時株主総会で決議を要しないことを、判例・学説が認めています。実務対応もこれを踏襲し、ほとんどの会社では、総額に変更がない限り毎年の株主総会での議案とはしていません。ただし、総額で承認を受ける場合、取締役報酬と監査役報酬は別々の議案とする必要がありますのでご注意ください。
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2. 非上場会社でも官報による決算公告は必要か。また、罰則はあるのか。
会社法は、株式会社には規模、公開・非公開を問わず、決算公告を義務付けています(440条1号)。そして公告を怠った場合には、取締役等は100万円以下の過料に処されます(976条2号)。
もっとも、毎年の総会後に行うべき決算公告は、合併公告等と異なり登記申請に添付するものではありませんし、また、役員の再任漏れのように登記簿から判明することもありません。つまり、決算公告違反の捕捉は困難であることもあって、現実に過料がなされるタイミングや頻度は不明ですが、そもそも非上場会社の公告が不要というわけではありません。
なお、定款上、公告方法を官報または日刊新聞としていても、ホームページに貸借対照表(大会社は損益計算書も)を掲示することで決算公告に代えることができます。ただし、この場合には、貸借対照表・損益計算書の掲示は、要旨ではなく全文を、5年間継続して行う必要があります。
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3. 株主に相続が発生し遺産分割協議中の場合、議決権はどう扱うべきか。
分割協議が成立する前の相続株主は、共同相続人の共有です。会社法では、「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ権利を行使することができない。」とされます(106条)。したがって、共同相続人の一人を権利行使者に選任することを促し、その者に議決権を行使させるのが原則といえるでしょう。「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」(同条但書)ともありますので、共同相続人の1人に全部の権利を行使させることも可能ですが、相続人間のトラブルを考えるとやはり回避すべきでしょう。
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4. 100%子会社であっても、総会を開催する必要はあるか。
株主総会の決議事項は、株主の人数によって異なることはありません。したがって、株主が1名の会社であっても、株主総会の決議を行い、議事録を作成する必要があります。
現実に株主総会を開催するとした場合、親子会社では社長が同一であることも多く、また100%子会社には代理人となるべき他の株主が存在しない(注)ことから、出席株主(親会社社長)と議長(子会社社長)が同一人物となってしまい、ありえないのではないかとの疑問もあるようです。この点に関して、法人株主は代理人として非株主である従業員を出席させることが判例上も容認されています。したがって、現実に株主総会を開催する場合には、社長が子会社の議長を努め、株主席には、親会社の従業員が座ることになります。
(注)標準的な定款では株主総会の代理人を株主に限定しています。
これに対し、「株主総会決議の省略」(319条)があります。これは、「株主総会の書面決議」と呼ばれることもありますが、正確にいえば、“書面だけ作成して開催したことにする”のではなく、“事前に株主全員から書面により提案内容についての同意の意思表示を受けることにより、これを可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす”というものです。100%子会社の株主総会のように、はじめから親会社の意思により議案内容が決定され、総会における決議結果が決まっている場合は、こちらのほうが実態に合うのではないでしょうか。
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